東京医科大学の坪井良治主任教授を中心とする研究チームは、東邦大学医療センター大橋病院(責任医師:新山史朗准教授)および株式会社資生堂再生医療開発室(細胞培養加工等担当)との共同で、脱毛症や薄毛に悩む方々を対象に、医師主導の臨床研究を行うと27日に発表しました。
この研究では、 自家毛髪培養細胞 を用いた細胞治療法の有用性および安全性の検証を行うとともに、これまでの治療法では対応が難しかった方々にも治癒の可能性があるということで、大きな期待が寄せられております。
自家毛髪培養細胞 とは
患者の頭髪から直接採取した細胞を培養して幹部に移植することで、免疫拒絶などの副作用の心配がなく安全性が高い治療法と考えられているほか、必要な組織採取も直径数ミリ程度と侵襲性(※外部からの感染など)が比較的小さいため、女性も含め幅広い患者に適用できるそうです。
今回は「毛球部毛根鞘(しょう)細胞」と呼ばれる毛根周辺にある頭皮の細胞が、毛髪を作るもとになっていることに着目。
患者の後頭部から、毛髪周辺の頭皮(直径数ミリ)を採取、毛根鞘細胞だけを取り出して培養によって増やし、患者本人の頭部に移植する計画だということです。
臨床研究は男女約60人が対象となり、同大学病院や東邦大学医療センター大橋病院で患者から採取した細胞を、資生堂の施設に移して培養しその後2病院に戻して患者に移植する計画です。
毛髪細胞治療技術の概要
<治療方法>
・患者さんの後頭部(有毛部)より毛包を含む直径数ミリの頭皮を採取。
・特定の細胞(毛球部毛根鞘細胞)だけを取り出し、細胞培養した後、患者さんの脱毛部位に注入(自家細胞移植)する。
<本治療の特徴>
・植毛のように広範な頭皮の切除は不要なため、外科施術における身体的負担(侵襲性)が小さい
・自家細胞を用いるため、移植後の拒絶反応などのリスクが小さい。
・毎日の使用が必要な育毛料と比べ、一度の治療で効果の持続が期待できる。
・男女問わず応用が期待できる。
共同研究チーム責任者のメッセージ
東京医科大学 皮膚科学分野主任教授
坪井良治 氏(統括責任医師)
薄毛・脱毛に悩む患者さんは非常に多く、自家毛髪培養細胞を用いた細胞治療は新しい解決策となりえます。 これまでは根本的な治療法がなく、特に、女性の患者さんは育毛剤以外には治療の選択肢が少なかったのが現状です。 薄毛・脱毛に対する細胞治療法を確立することで、患者さんのQOL(クオリティー・オブ・ライフ:生活の質)向上に大きく役立つと期待しています。
東邦大学医療センター 大橋病院皮膚科准教授
新山史朗 氏
1999年にドイツの留学先で毛髪再生の研究に着手して以来、薄毛や脱毛に悩む方々のために役立つ細胞治療の 確立を望んできました。脱毛治療の第一人者である坪井医師、そして長年にわたって毛髪を研究してきた株式会社 資生堂との共同研究により、細胞治療を進展させることができ、このたびの臨床研究により、将来の実用化をめざしてまいります。
株式会社資生堂 再生医療開発室長
岸本治郎 氏
資生堂は明治5年の創業当時から、頭髪、育毛製品を手掛け、毛髪研究に取り組んできました。
2013年にヒトへの臨床応用が可能な毛髪再生の技術を導入し、社内で培った毛髪細胞技術などを駆使し、神戸医療産業都市に資生堂細胞加工培養センター(SPEC®) を開設、2015年には施設の製造許可を厚労省より取得しました。今後、東京医大、東邦大学医療センター 大橋病院各皮膚科医療機関と連携し、SPECを通じて、安全で高品質な自家毛髪細胞を提供する役割を担うことで 脱毛症や薄毛に悩む方に向けた細胞治療の確立に向け、貢献していきたいと考えています。
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慶大、iPS細胞で毛包生成!資生堂が商品化に向けて一歩
去年、iPS細胞を使用した毛包生成に成功した資生堂ですが、今回はその技術も取り入れつつ新たなアプローチでの臨床研究に望むことになります。
ここ数年、資生堂は毛髪再生にかなり積極的に取り組んでいますね。
治療の考え方は「PRP毛髪再生療法」に近い印象を受けました。
自家毛髪培養細胞の場合、たった一度の治療で効果の持続が期待できるということですから もし技術が確立されれば毎日の育毛剤から解放される日がいつか来るかもしれません。
もっとも、まだまだ先の話でしょうけど“(*`ε´*)ノ
東京医科大学との共同研究との事ですのでその信頼性は高く、実用化されることを願うばかりです。
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